会報 SHORT-NEWS[2013年11月号#297 一覧]

主催:NPO法人目黒ユネスコ協会 共催:(公財)目黒区芸術文化振興財団

2013年11月1日(金)19:00  めぐろパーシモンホール(大ホール)

白ドレス2-2.jpg

心地よい秋の夕べ、山形由美&荘村清志によるフルートとギターのデュオリサイタルが開催された。やや異色の楽器の組み合わせだが人気上々、ほぼ満席。小中学生の参加も多い。私も、どんなコラボレーションになるのだろうと、大変興味深く開演を待った。

まず、相良会長の挨拶で両氏のプロフィール等が紹介され、引き続き演奏がはじまった。幕開けは、ヘンデルの「オンブラ・マイ・フ(樹木の蔭で)」のデュオ演奏。フルートの柔らかく爽やかな音色に少し哀調を帯びたギターの伴奏が、何とも絶妙のハーモニーを醸しだし、その音色に感動。前半のプログラムでは、それぞれのソロによる演奏を交え、主にクラシック楽曲が演奏された。「アルハンブラの想い出」以外は私にはあまりなじみのない曲目だったが、それぞれの楽器のもつ、独特の音色に心を洗われる思いがした。

後半は、「浜辺の歌」「宵待草」「花」など日本の歌曲に始まり、「禁じられた遊び」「アマポーラ」「太陽がいっぱい」などのポピュラーな楽曲を主体とした演奏へと続いた。また一方、組曲の一部であるというウィターの新曲「ハイヒール」は軽快で、心躍るものであった。この新曲、何十年・数百年後、古典の名曲として聞く人々がいるだろうと、ふと思った。

最終曲のピアソラ作曲「オブリビオン(忘却)」の演奏は、この時期にぴったりの深まる秋を感じさせる美しい旋律。また「リベルタンゴ」は、実際にタンゴを優雅に踊っている姿が目に浮かぶような心地よいフルートとギターの競演だった。

最上の音楽の贈り物に 感謝!感謝!

 会員 原田富美子

≪プログラム≫

  • ヘンデル:オンブラ・マイ・フ
  • グラウンド:グリーンスリーブス (フルート・ソロ)
  • ヘンデル(K.シャイト編):ソナタイ短調 HWV362
  • タルレガ:アルハンブラの想い出(ギター・ソロ)
  • イベール :間奏曲
  • 成田為三:浜辺の歌
  • 多忠亮:宵待草
  • 瀧廉太郎:花
  • プホール:ブエノスアイレスの雲
  • スペイン民謡: 愛のロマンス(映画「禁じられた遊び」より)
  • ラカジェ:アマポーラ
  • ニーノ・ロータ:太陽がいっぱい
  • ウィター:「ドリーム・パイプNo.1」より "ハイヒール"
  • ピアソラ:オブリビオン、リベルタンゴ
  • ≪アンコール≫
  • マシャード:ボーロ  エルガー:愛の挨拶






定刻19時、開演のチャイムが響きわたった。一瞬、背筋がすっと伸びる。舞台挨拶から戻った相良会長が「(観客が)ずいぶん大勢入ってますね」と、頬をほころばせた。傍らにはダンディーな荘村さん、真っ白いドレスの山形さんがスタンバイしている。扉の隙間から光が差し込み、大きな拍手が沸き起こった。主役の登場だ。舞台裏にいても、拍手の厚みで観客の多さが感じとれる。1階はほぼ満席で、用意していた800部のプログラムも、残りわずかと、後になって知った。

東京には著名なホールが数多く、毎夜々々世界中の音楽家の演奏会が開かれている。それに肩を並べ、いかにして目黒のホールに人を呼ぶか、少ない予算内でどうPRするか、皆で知恵をしぼった。そして今回、"収益より集客"をめざして新たな分野を開拓し、想定以上の来場につなげることができた。ご協力いただいた皆様に「有難うございました」と心から感謝を申し上げたい。

反省点も多々ある。開場前に170名もの人々の列ができたが、番号札の準備は100枚。自由席とはいえ、こんなに多くの方々が早くから並ぶとは予測していなかった。皆様にご迷惑をおかけしたこと、その場で適切に対処できなかったことなど、今後の検討事項だ。

目黒ユネスココンサートは来年45回目を迎える。先達が永い年月をかけて育て上げ、ようやく今日のような形になった。まさに目黒ユ協の財産といえる。このコンサートを、持続可能なものとして次代に引き継いでいきたい、と心から願ってやまない。

コンサート実行委員長 林 多香子

2013年10月2日(水)10:00  めぐろ学校サポートセンター  参加者31名

文化講座2013吉岡氏.JPG講師:吉岡正樹氏 (全国日本語教師養成協議会代表理事)

講師の吉岡氏は全国日本語教師養成協議会を十数年前に設立し、現在、学校法人吉岡教育学園千駄ヶ谷日本語学校(住所:高田馬場)を運営されている。この学校は38年に及ぶ歴史があり、氏は日本語教育の現状そして推移を熟知されている。

日本に来て日本語を学ぶ外国人は高等教育機関(大学・大学院・専門学校等)に進学するための留学生や日本の文化(アニメ、マンガ、J-POPなど)に魅せられてきた人、海外日系人、就労している人、日本人の配偶者など多種多様な目的の人たちである。その中で、日本語学校で学ぶ留学生は1?2年の短い期間に、日本語を習得して、大学入学相応の日本語力を身につける必要がある。また、日本語学校は文化、習慣が異なり、しかも来日当初日本語が話せない若者に生活指導、法令順守、出席管理などを行うとともに親身に相談相手になり、日本での生活に適応できるよう生活全般の世話をし、日本語の学習効果を挙げなければならない。当然、日本語教師は、日本語の専門家でなければならない。日本語教師養成講座での420時間の学習はもちろんのこと、日本語教育能力検定試験に合格することが望ましい。日本語教育の現場では、実地でのノウハウこそ要求される。直接法(媒介語を使わず、日本語のみで教える)の授業は、積み重ねによって学んでいくので、一回たりとて手を抜けないのである。

 現在、世界の日本語学習者は400万人に上る。トップは中国で、インドネシア、韓国がそれに続く。その動機として、前述のように日系企業への就職のほか、アニメ、J-POP等への興味という文化的側面からのアプローチもある。日本語は日本の文化、社会、生活習慣、日本人の考え方を表しており、日本語教育は日本を知ってもらうための教育でもあり、それが学習者の国との相互理解、ひいては国際交流にもつながっていくのである。それを思えば、日本語学校及び日本語教師は極めて重要な役割を果たしているといえる

取材:広報 清水敦子

2013年10月3日(木)18:30  中央町社会教育館  参加者41名

講師:相良憲昭氏 (桐蔭横浜大学特任教授・本協会会長)


文化講座2013会長2.jpg相良先生は最初に、文化と文明の違いについて言及された。それは大きく分けると、文明は人類の「知恵」であり、文化は「生活、風習」をさすものだと説明。そして文化としての言語についても話が及ぶ。

世界にはおよそ5000-7000の言語が存在すると言われているが、2週間に一つの割合で言語が消滅しているという。 アメリカインディアンやアイヌなどの、文明の恩恵を被っていない民族ほど言語は豊かであるが、記録を残さない『口承』だけの言語は消滅していくという歴史的現実がある。方言についても文化的な考察がなされ、日本の高知や和歌山や沖縄の方言などが、一時期禁止された例についてもとりあげられた。そういった事例は、文化の発端でもある言語についての興味深いアプローチであり、言語について考える糸口となるに違いない。

総じて、『文化』を定義するにあたり、国語学者の金田一春彦氏による定義を引用された。『人には個性がある。民族にも個性がある。民族の個性こそが文化である。だから文化には優劣がない』というもので、日本人が言った文化の定義として最も好きである、と付け加えられた。

さて今回、富士山が世界自然遺産ではなく、世界文化遺産に登録されたのは、富士山が日本人の信仰の象徴であるからというもので、信仰が文化遺産としての対象になるのは極めて珍しいことだという。信仰が文化遺産になるのは珍しいが、それでは、信仰の違いによるパレスチナとイスラエル間の確執を減らすにはどうすればよいのか?いがみ合った国々をどのようにして平和と友愛に導くのか?これらの問いに対しては、文化のもつ多様性や相対性を各々が認識することこそが、憎悪をなくすことにつながると力説された。そしてユネスコは文化の多様性を尊重する機関であることを再確認。

落語家になりたかったとおっしゃる相良先生の文化講座は、楽しく優しく言語と文化を再認識し、再提起する意義深い講演となった。

広報 山田峰子

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