2013年10月3日(木)18:30 中央町社会教育館 参加者41名
講師:相良憲昭氏 (桐蔭横浜大学特任教授・本協会会長)
相良先生は最初に、文化と文明の違いについて言及された。それは大きく分けると、文明は人類の「知恵」であり、文化は「生活、風習」をさすものだと説明。そして文化としての言語についても話が及ぶ。
世界にはおよそ5000-7000の言語が存在すると言われているが、2週間に一つの割合で言語が消滅しているという。 アメリカインディアンやアイヌなどの、文明の恩恵を被っていない民族ほど言語は豊かであるが、記録を残さない『口承』だけの言語は消滅していくという歴史的現実がある。方言についても文化的な考察がなされ、日本の高知や和歌山や沖縄の方言などが、一時期禁止された例についてもとりあげられた。そういった事例は、文化の発端でもある言語についての興味深いアプローチであり、言語について考える糸口となるに違いない。
総じて、『文化』を定義するにあたり、国語学者の金田一春彦氏による定義を引用された。『人には個性がある。民族にも個性がある。民族の個性こそが文化である。だから文化には優劣がない』というもので、日本人が言った文化の定義として最も好きである、と付け加えられた。
さて今回、富士山が世界自然遺産ではなく、世界文化遺産に登録されたのは、富士山が日本人の信仰の象徴であるからというもので、信仰が文化遺産としての対象になるのは極めて珍しいことだという。信仰が文化遺産になるのは珍しいが、それでは、信仰の違いによるパレスチナとイスラエル間の確執を減らすにはどうすればよいのか?いがみ合った国々をどのようにして平和と友愛に導くのか?これらの問いに対しては、文化のもつ多様性や相対性を各々が認識することこそが、憎悪をなくすことにつながると力説された。そしてユネスコは文化の多様性を尊重する機関であることを再確認。
落語家になりたかったとおっしゃる相良先生の文化講座は、楽しく優しく言語と文化を再認識し、再提起する意義深い講演となった。
広報 山田峰子
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