主催:目黒区教育委員会 主管:NPO法人目黒ユネスコ協会
講師:宮下佐江子氏(古代オリエント博物館研究員)
2014年1月31日14:00~15:30 緑が丘文化会館 参加 45名
シリアは、北のトルコ、東のイラク、南のヨルダン、西のレバノン、イスラエルに接している農業国である。 隊商都市パルミラは、シリア砂漠の中にあり、ユーフラテス川の南西タドモルにある都市遺跡である。ギリシャ語でナツメヤシのことを『パルマ』ということから、『パルミラ』と呼ばれたと推測されている。砂漠ではあるが、ナツメヤシやオリーブが群生している美しい土地である。 パルミラは紀元前2000年位から豊かな文明が栄え、紀元前1世紀から紀元3世紀には、ローマと中国を結ぶシルクロードの中継都市として発展し、商業、裁判、訴訟などの法体制も整っていた(日本では縄文時代末期から弥生時代である)。そしてその時に使われていた『楔形文字』は商売の契約のために存在したという。また"漢の時代の中国の絹"が発掘される最も西の地域である。
宮下先生は考古学者としてパルミラの遺跡の発掘に長く携わってこられた経験をもとに、地下墓、塔墓、家型墓、建造碑文など、その形態や特徴を、分り易い言葉で楽しく詳しい説明をしてくださった。見事に修復された墓や彫像は実に美しく、筆者も瞬くうちにパルミラの魅力にとりつかれた。
1980年には、ユネスコ世界遺産(文化遺産)に登録されている。日本の法隆寺や薬師寺にも描かれている葡萄唐草(ぶどうからくさ)の文様は、パルミラからシルクロードを経てきたと言われている。しかし現在はシリアの内戦のために、遺跡の盗掘やミサイルの砲弾で、一部の遺跡は破壊行為を受けている。発掘や修復作業ができないのは勿論、現地作業員の安否もわからない不安定な状態が続いている。一日も早くシリアの内戦が終わり、平和が訪れ、宮下先生が人生を捧げているパルミラの遺跡の発掘修復作業が再開されるよう祈ってやまない。
広報 山田 峰子
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