主催:目黒区教育委員会 主管:NPO法人目黒ユネスコ協会
2014年3月14日(金)18:30~20:00
緑が丘文化会館 参加:21名
ユネスコの中で「世界遺産」は看板事業といえよう。今回の講師はまさにその現場で活躍された方で、実際どうやって「世界遺産」が決まっていくのか、生の声を届けて下さった。昨年(2013年6月)「世界遺産」に登録された「富士山」を例にとられたので、そのことも理解の大きな助けになった。
富士山は最初「自然遺産」としての登録が考えられたが、「自然遺産」は手つかずの自然という基準であるため「文化遺産」の登録を目指した。ちなみに日本での「自然遺産」は小笠原諸島などで、ここは飛行機の便もない地域である。 「文化遺産」にはストーリーが必要で、富士山の場合「古来よりの信仰の山」というものである。
まず、地元の熱意により日本での暫定リストに載ることから始まり、申請書を添え日本政府として推薦し、パリのユネスコに届く。「ユネスコ世界遺産委員会」が決定する前に「ICOMOS」(イコモス)という専門家集団に審査が依頼され、現地にそのメンバ?が派遣され、レポートが書かれる。その後4段階の評価が下され、富士山は三保の松原を除外すればという条件がつけられ「インスクリプション」(登録)に1段階及ばない評価だった。日本政府に戻され、検討の後、三保の松原も含めるために、「ロビーイング活動」もなされた。この「ロビーイング」というのが大変興味深く、場合によってはICOMOSの勧告を覆す力を持つが、自制しながら努めるべきだという木曽氏の意見である。
そして、ついにプノンペンでの「世界遺産委員会」で、富士山は三保の松原も含め「世界文化遺産」として登録が決まった。最初のユネスコ提出から1年半くらい後であった。
「世界遺産」は「OUV(outstanding universal value) 」という見地に立ち、登録される。「顕著に世界的に見て普遍的価値がある」ということであるが、価値というものはしばしば相対的なものだ。実際「世界遺産」の数の分布は地域的にアンバランスで、申請書の分厚い書類を書くにも専門家が必要で、経済的な豊かさが要求される。締めくくりに木曽氏は、単なる「世界遺産」礼賛でなく、このような問題点にも触れられた。世界遺産登録にお力を注いだ氏ならではの重い言葉に、ユネスコ会員のひとりとして本当に貴重な講座を聴けたと感じた。
広報 清水 敦子
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