主催:目黒区教育委員会 主管:NPO法人目黒ユネスコ協会
2014年11月22日(土)14:00~ 美術展会場 参加:32名
講師:罍 二夫 氏(在ボスニア・ヘルツェゴビナ初代特命全権大使)
ボスニア・ヘルツェゴビナは東ヨーロッパのバルカン半島北西部に位置する共和制国家で、首都はサラエボである。周囲にクロアチア、セルビア、モンテネグロ。この地域は地理的環境のせいで、古くからカトリックと正教会の対立の最前線となり、中世のころから両宗教の激しい布教争いの場となった。15世紀後半にはオスマントルコの支配下に入り、19世紀後半にはオーストリア・ハンガリー帝国とロシア帝国の勢力争いの場となり、第2次世界大戦後は旧ユーゴスラビアの1共和国となった。1990年代にユーゴの崩壊過程でボスニアも戦乱を経験し、1995年の終息後現在に至る。
首都サラエボは第1次世界大戦発祥の地であり、3民族、3宗教混在の町である。3民族とは、ボシュニヤク人(イスラム教)48%、クロアチア人(カトリック)14%、セルビア人(正教徒)37%で、それぞれの寺院が近場に存在する不思議な光景がある。中でもイスラム教の戒律が一番厳しいが、ボスニアでは守られていない。それは余計な摩擦を防ぎ、地域社会を守る為の生活の知恵でもあり、共存しているともいえるが、「冷たい平和」とも呼ばれている。戦争が終結後、各国の支援も受けて復興も開発も進んだが、民族の仲直りは出来ていない。複雑な国の機構で、大統領が5人、首相は14人もいるそうである。
勤勉で、教育熱心で、綺麗好きな国民性だという。今でも戦争状態のイメージがあるが、実態は各民族がけん制し合い、戦争がおきない仕組みになっている。『冷たい平和』と言われる所以、と大使は説明された。しかし怨念を持ち続け、弾痕も地面の血の跡も憎しみを忘れないようにわざと残してあるということで、民族間の歩み寄りはなかなか遠いように思える。
それでは、ボスニアに未来はあるのか?あるとすればEU加盟すること。外国人との接点がふえればボスニア人同士が助け合うのではないか?という考え。EU加盟は3民族共通目標であり、ボスニア・ヘルツェゴビナの国旗にもそれが現れている。
今回目黒ユネスコ美術展にボスニアの子供達の素晴らしい絵画がたくさん届いた。このような地味な活動が、平和への願いの小さな架け橋となることを祈って止まない。
広報 山田 峰子
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