主催:目黒区教育委員会 主管:NPO法人目黒ユネスコ協会
2015年2月6日(金)14:00~ 緑が丘文化会館 参加:34名
講師:道明三保子氏(服飾・染織文化研究家/文化学園大学名誉教授)
この講座を聴くにあたり普段刺繍と縁のない生活をしている私は、まずタイトルに興味をそそられた。刺繍とは歴史的に見て、多くの民族が地域文化の違いに拘わらず綿々と続けてきたものである。刺繍は何より装飾として大変優れていて、簡単な道具があれば誰でも手仕事ですることができる。高い芸術性のある名品から暮らしに使う品々にも施された。女性としての評価にもつながる場合もあった。民族の伝統文様を縫い付け、自分たちの独自性、アイデンティティを示した。宗教的・儀礼的用途やモニュメンタルな物語や歴史の表現にも適している。また、弱い布地の補強の面で、袖口、肩、胸元などに部分的になされることもある。婚礼の衣装の刺繍は吉祥を表し、邪悪なものの侵入を妨げる意図もあった。ただ、日本においては、縫箔や絞り等熟練の技術が重視された。そのため、庶民の女の手仕事ではなく、専門職人の手によるものがほとんどを占めている。
講座の後半、スクリーンに、中国、日本、パレスチナ、フランス、ウズベキスタン等の民族刺繍の写真が映し出され、各々特徴のある刺繍を実感することが出来た。講師自身、中国の美しい刺繍を施した上着をお召しになり、「手間を掛けて作られ、使い捨てでなく一つのものを長く使い続ける刺繍の価値」にも触れられた。知らなかった世界を見ることのできたひとときだった。
広報 清水 敦子
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