主催:目黒区教育委員会 主管:NPO法人目黒ユネスコ協会
2016年2月5日(金)14:00~16:00 緑が丘文化会館 参加 41名
講師:中田一郎氏(古代オリエント博物館館長)
普段の生活においては、ほとんど疎遠な古代歴史のハンムラビ法典、今日は一体どんな興味深い文化に出会えるのかと、期待を抱いて多くの方々が会場の席を埋め尽くした。実際に中学校の歴史で学んだ「目には目を歯には歯を」との謎めいた文言だけが記憶に残ってはいるものの、さてその背景や実態を知る人は少ないのではないだろうか。
中田先生のお話が、穏やかな調子で滑り出した。紀元前1700年、古代バビロニアを治めたバビロン王、人民を統制し、真にして善なる道を歩ませようと、古代世界にハンムラビ法典を確立した。その優れた模範的な判決を集めたいわゆる「手引書」は、エラムの古都スーサ遺跡で、100年ほど前に発見された。それらは、3つの断片でそれぞれ見つかった。すぐに復元されたが、玄武岩製の高さ2.25mの大きさで、ハンムラビ法典碑の浮彫が施されており、現在はパリのルーブル博物館で所蔵、展示されている。そこには神々より職務委任を賜り、それを遂行し、後世の王達に対し祝福を与え、そして法典碑を毀損したり改ざんしたりする王達に対する呪いを与えんとしている。またその条文の多くは、女や弱き者が理不尽に損なわれることがないように、同等以上の償いによって、強者を厳しく律しており、また行政権を有する者への責任をも追及している。
問題や争いの裏に、示されない特別な事情があったのでは、償いは果たしてそこまでやるのかとの疑念は残るものの、今から4000年近い古代の大昔に、このような秩序が現に存在していたとの驚きは、参加者それぞれの心に大きな感銘を与えたに違いない。
広報 沓澤 逸男
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