主催:目黒区教育委員会 主管:目黒ユネスコ協会 2016年12月3日(土)14:00~16:00
話し手:内田洋子氏 ジャーナリスト 緑が丘文化会館 参加:60名
冒頭に、世間でイタリア語を学ぶことが認知されない時代に、東京外国語大学イタリア語学科に学んだいきさつが披露された。文法等の語学の授業は最初の3カ月で終わり、以降は"研究"のみのカリキュラム。話すこと、イタリアで体験することを希望していたので、1年間のイタリアへの国費留学に応募し行けることになった。留学先はナポリで「南部イタリア問題」が研究テーマ。
1980年のナポリ大地震の翌年で、「歩けば問題にあたる」の始まりであった。町は瓦礫の山で、学舎も損壊し、大学は立入禁止。震災後10カ月も経つのに、まだ葬式が続いていた。
下宿先は由緒ある法律家の家で、ここで「イタリアでは法律に従っていたら個人の生活は守れない。毎シーズン支配者(内閣)が変わり、法律も変わるので毎日生活を変えなければならない。規則は個人の中にあり、自分たちが規則を作る気概を持つべき」と教わる。
世話になっている人にケーキを作ろうと思い立ち卵を買いに行ったら、中の卵の大半が割れていた。「代えてもらえませんか」と言ったら「卵はどうやって調理するの、割るでしょ、手間が省けて礼を言ってもらいたいくらいだ」との返事。ナポリの人はこう言って相手のリアクションを待っている。そこで「ゆで卵を作りたいの」と反論したら店主は「気に入った答えだ、代えてやれ」と言った。
大学に行くのにバスに乗ったが出発しない。そこにおじさんが乗り込んできて、チケットを押印機に差し込んだが作動しない。おじさんは怒って押印機をガンガン叩き出した。そこで運転手は「金づち要りますか」と問うた。車内は拍手喝采。「その場で自分の気持ちと問題をどう解決するか」腕の見せどころである。
イタリア人が"生きる技"を尽くし問題に立ち向かう姿を[ジーノの家 イタリア10景]等で書いてきた。よく作り話かと聞かれるが、見たままである。問題のあるところにその数だけ人の苦しみがあり、負けずにどう対応しているかを見てほしい。イタリアでは古代ローマからの苦労、ベネチアの沈下など問題山積だが、悪い物を順々に掘っていくと未来のヒントになる。これがタイトルの「七転び八起き」である。
質疑応答に入り、6件の質問に対し1時間近く懇切丁寧に説明頂いた。講演後のアンケートで、直接聞くイタリア事情は生々しく、是非続編を聞きたいとの声が寄せられた。
研修委員長 山本 一雄
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