日本ユネスコ協会連盟 海外事業部主任 青山由仁子

DATA-5.jpg九州北部と朝鮮半島を結ぶ玄界灘は、大陸との交流の舞台であった。海に浮かぶ沖ノ島では、宗像の人びとによって、4~9世紀の約500年間にわたり、航海の安全を祈願した祭祀が行われていた。巨岩上や岩の陰といった祭祀の場から発見された約8万点の奉献品は、全てが国宝に指定されており、活発な対外交流の物証である。島そのものが信仰の対象とされ、厳格な禁忌や伝統によって、ほとんど人の手が加えられることなく守られてきた。

7世紀後半になると、沖ノ島と共通する祭祀が大島の中津宮(なかつみや)や、本土の辺津宮(へつみや)へと広がり、海によって結ばれる広大な空間で、宗像三女神を祀る宗像大社が成立した。宗像大社のほか、渡島できない沖ノ島を拝む拝殿である沖津宮遙拝所(おきつみやようはいしょ)、そして、信仰の伝統を築いた宗像の人びとを示す新原(しんばる)・奴山(ぬやま)古墳群も構成資産に含まれている。
宗像地域の人びとの中でも、特に漁業に従事する人びとの間で沖ノ島に対する信仰は篤く、豊漁や漁の安全が祈願されていた。数百隻の漁船による大船団によって、田(た)心(ごり)姫(ひめの)神(かみ)と湍(たぎ)津(つ)姫(ひめの)神(かみ)が迎えられる「みあれ祭」は、現代の信仰を象徴している。
世界遺産は、自国だけでなく、地球市民として遺産を保護し、継承していくための国際協力体制を構築することを目的としているが、その根底には、異文化理解を通じて平和な社会の実現を目指すUNESCOの理念が存在する。宗像・沖ノ島に代表されるように、厳しい自然環境に対して畏敬の念を抱き、自然と共生しながら生活を育んできた古来の日本人の姿は、まさに持続可能な社会の実現に向けて、重要なメッセージを国際社会へ発信しているのではないだろうか。


<沖ノ島の禁忌>
・「不言様(おいわずさま)」...沖ノ島で見たり、聞いたりしたものは一切口外してはならない
・「一木一草一石たりとも持ち出してはならない」
・「禊(みそぎ)」...沖ノ島への上陸は認められていない。上陸を許された場合や、神職であっても全裸になり、海中で穢れを祓わなければならない。
・その他...四本足の動物を食べてはならない。女人禁制・他。


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