2020年1月16日(木)13:30~15:30  めぐろパーシモンホール小ホール
主催:目黒区教育委員会 主管:NPO法人目黒ユネスコ協会 参加:149名
講師:西洋美術史家 木村 泰司 氏

ウィーン美術史美術館は、オーストリア、ウィーンにある世界最大級の美術館の一つ。ハプスブルク家代々のコレクションを基礎とし、その歴史はマクシミリアン1世までさかのぼる。本格的な収集が始められたのは、皇帝ルドルフ2世の時代で、ピーテル・ブリューゲル(父)等の名作を買い、1659年世界初の美術コレクションの図版入りカタログを作らせた。18世紀に入ってから、女帝マリア・テレジアは、ルーベンス、ヴァン・ダイクなどを加え、1781年、コレクションは一般公開された。 この時初めて市民が絵画芸術に触れたことになる。今日のルネッサンス風の建物は1891年に建てられた。ルネサンスから19世紀に至るまでのヨーロッパの巨匠の作品1000点以上を網羅する。
木村氏は、絵画の古典規範として、ラフェエロの 『ベルヴェデーレの聖母』 を例に取られた。
聖母マリアの服の赤は慈愛、青は叡知を示す。傍らには聖ヨハネの持つ十字架を握る幼子イエス。 三角形の構図は31歳年上のレオナルド・ダ・ヴィンチから、と解説。
絵画を感性で見るのではなく、時代背景から読み解く知識が必要。 歴史(Histoire)という語は、歴史という意味もあるが物語という意味もあり、物語を伝えるために生まれたのが絵画である、と優しく説く。 それを踏まえてベネチア派絵画の色彩の美しさの所以も解説。ジョルジオ―ネの『ラウラ』『矢を持つ少年』 、ティツィアーノの『サクランボの聖母』『ジプシーの聖母』 、ヴェロネーゼの『東方三博士の礼拝』 等詳しい解説が続く。
神話画家コレッジョの 『ユピテルとイオ』 『ガニュメデスの略奪』から、神話の変身物語を解説。 神話の神ユピテルが鷲に変身して少年にお酌をさせるのが、星座となって、鷲座の横に水瓶座があるという。ラテン文学の「変身物語」はヨーロッパの上流社会では必須の教養だそうだ。
また、この美術館で最も有名なブリューゲルの『バベルの塔』『雪中の狩人』、北ヨーロッパで最も成功した画家ルーベンスの『毛皮をまとったエレーヌ・フールマン』、当時では珍しい女性画家であるヴィジェ・ブランの『マリー・アントワネット』等々、限られた時間の中で出来るだけ多くの芸術作品を詳しく読み解いて下さった。
《美術鑑賞を楽しむ為には、まず個人の主観を省き、好き嫌いで鑑賞することを止め、何が美しいのかを学び、時代背景を知ることによって、絵画、建築、彫刻は私たちに語りかけてくれるようになります》 という木村先生の熱い言葉だ。 全てをとても書ききれないが、目から鱗のこの講演に感謝したい。

広報 山田 峰子


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