主催:目黒区教育委員会 主管:NPO法人目黒ユネスコ協会
日時:令和4年7月23日(土)14:00~16:00
会場:緑ヶ丘文化会館   参加者 27名 
講師:須磨 章 氏(NHK文化センター講師)

講師の須磨章氏は、NHK世界遺産事務局長として2003年から10年以上に亘って世界遺産プロジェクトに携わってこられた。今もなおNHK文化センターにて世界遺産講座の講師としてご活躍中だ。
須磨氏は最初に、現在のスペインにある、セゴビアの水道橋の話から始められた。ローマ帝国が1世紀に建設し、19世紀まで2000年近く町に水を運び続けていた。現存する水道橋の中で最も完璧なものだ。当時のローマ帝国の技術の高さに驚かされる。ヨーロッパの重厚長大な「石の文明」が西洋市民に行き渡る顕著な例だ。ここで、Outstanding Universal Value (人類にとって顕著で普遍的な価値)という概念が世界遺産のキーワードとなる。
次に木の文明として、マラムレシュの木造教会群(ルーマニア北西部)のシュルデシティ教会(8つの世界遺産)の説明。樅の木の林に囲まれたこの地では、文字通り「ゆりかごから墓場まで」すべて樅の木で作られている。樅の木は尊く、キリストの身体そのものと考えられているため、建物には釘1本も使われていない。樅ノ木のように正直でまっすぐにという言い伝えがあるそうだ。
Authencity (真正性、信ぴょう性、真実性)という2番目の概念のキーワードがあがる。
3番目に土の文明(泥から生まれた街)西アフリカのマリ共和国のジェンネの街だ。
サハラ砂漠に近く、ニジェール川が運んでくる泥で築かれた大きなモスクだ。ジェンネの街はモスクだけでなく、全てが泥でできている。暑さを遮る日干し煉瓦で、集会所も、学校も家々も作られる。女性がはくスカートの模様までも泥染めだ。ニジェール川の泥を乾季にせき止め、米や稗を混ぜて寝かせ、壁塗りや家作りがはじまる。モスクの化粧直しは祭りのようで、大人も子供も皆で壁塗りの儀式をする。 泥の文明では、もう一つ、イエメンのシバームだ。「砂漠のマンハッタン」と呼ばれ、家々はすべて泥でできているが、建物は高層住宅なのだ。 モロッコの「フェズ旧市街」も泥で作られた迷宮都市だ。地球上の30パーセントくらいはこうした泥文明のなかに暮らしていると思われる。
ここで、世界遺産条約とは、そもそもどのような経緯で出来たか?について、須磨氏の解説。
1952年、エジプト政府がアスワン・ハイダムの建設計画を発表した。これにより、ナイル川岸に建つ古代エジプト文明の遺跡「アブシンベル神殿」がダムの底に沈んでしまうのは明白だった。
遺跡の保護はまだ行われていない当時、歴史学者の努力や、ユネスコの呼びかけもあり、世界各地でツタンカーメン展が開かれ、各国の理解を得た。その結果、各国が手を携えてラメセス2世像と神殿を救うことが出来た。救済活動が終了し、アスワン・ハイダムも完成した。
この類い稀な成功により、ユネスコによる世界遺産運動が始まっている。1972年の世界遺産条約締結だ。
今では条約に190か国が加盟しているが、そのうち世界遺産登録されているのは、30か国に過ぎない。
世界遺産がただ単に、人類にとってかけがえのない文化遺産や環境を守るためだけなく、世界平和にも貢献していってくれることを願ってやまないものである。

理事 山田 峰子


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